思考し続ける日常から離れ、都心から3 時間ほどドライブをして長野県・軽井沢へ。目指すは上信越高原国立公園内にあるアウトドアリゾート「ライジング・フィールド軽井沢」。4万坪という大自然の中でネイチャーアクティビティが存分に楽しめるそこでは、普段はあまり使わない右脳を最大限に刺激し、生来の野生を蘇らせる時間が待っている。
Photography_Eric Micotto Text_Takashi Osanai
ゆらめく炎に魅了され思考がストップ、無心となる
今回訪れた「ライジング・フィールド軽井沢」では、体験メニューのひとつとして焚き火を用意してくれていた。近年はアウトドアブームもあり、焚き火にハマる人が増えているというのはよく耳にする話だ。自分で火をおこす体験自体が日常から失われて久しく、そのためパチパチと音をたてながら薪が燃え、ゆらりゆらりと炎が揺れている様子に、心を奪われてしまうのだという。
確かにチェアに座りながら無心で炎を見つめている状況は瞑想状態にあると言っていい。思考は止まって脳内はクリアとなり、副交感神経が優位となることで心も落ち着く。感覚が磨かれていくのだ。
「学びも得られます。うまく火がつかないなど実際のアクションを通じてわかることがありますし、そこで〝なぜか〟を考え、教訓をひき出し、もう一度やってみることができる。肉体と感覚を使い、かつ楽しみながら学べるのが自然体験活動なのです」と内田さん。続けて、より体験総量を増やすためブッシュクラフトによる体験を推奨していると言った。
自分だけの焚き火プロジェクトで、
未来への視点を養う
ブッシュクラフトとは〝自然環境下における生活の知恵〟を意味するアウトドアスタイル。ナイフワークとファイヤーメイキングを基本技術に、森や川などで見つけた自然界のモノを活用するところが特徴的で、より自然とシンクロできるといわれている。
焚き火に関しても、「ライジング・フィールド」では事前に薪が用意されていないため、焚き火に相応しい薪を森に入って探すことから始めることになる。つまり総合的な視点を持ててこそ、初めて〝焚き火プロジェクト〟を完遂することができるのだ。
ナイフで薪割りをする“ バトニング” は、焚きつけ用の細い薪を作りたいときに有効なテクニック。薪にナイフを押し当て、刃先を木材で叩くことで薪を割っていく。
突発的なハプニングへの対応力も身につけられる。たとえば火の勢いが弱まった状況に接した際、ただ見ているだけでは火は消えてしまう。求められるのは〝吹きさらしの場での焚き火で、風が強く吹いてきた〟などといった周辺環境を含めた現状認識力。そして、その状況下で火が再び勢いを増すために必要な、空気、燃料、熱のいずれかを効果的に加えていける確かな実行力なのである。
今回も薪として使う枝を森の中から集めてくることからスタート。渡邊さんによれば「探すのはよく乾燥している枝です。軽く曲げてパキッと折れたら乾いている証拠ですので拾っていきましょう」と、枝の集め方にもさまざまなコツがあると言った。
その後は枝の太さを見ながら丁寧に〝燃えやすい順〟に仕分けていく。太い薪にはそう簡単に火はつかない。火は育てるもので、小さく細い枝から燃やしていくのだ。
そうしてクリエイティブなひとときを楽しんだ後の振る舞いも大切となる。それは〝来たときよりも美しく〟という言葉の通り。痕跡を少しも残さずに去るのが、焚き火を楽しむ者の矜持なのである。
「炭は分解されず環境に残り続けますが灰は肥料にもなります。この太さならどれほどの時間で燃え尽きるのかと考えて薪はくべましょう」と渡邊さん。焚き火は未来の環境を思う視点も養えるのだ。