キース・ヘリングの代表的な作品群が並ぶ展示室。色鮮やかなオブジェと壁面の絵画作品が来館者を迎える。
PHOTOGRAPHY Atsushi Makabe WORDS Koichi Yamaguchi
一人の実業家の情熱が生んだ
世界で唯一の聖地
80年代のニューヨークで、一人の実業家がキース・ヘリングの作品と運命的な出会いを果たした。漫画のような親しみやすさの奥に潜む強いメッセージ性に心を奪われた中村和男氏は、以来30年以上にわたって蒐集を続けている。
その情熱の源泉は、キース・ヘリングの生き方への深い共感にある。エイズで31歳の若さで世を去ったアーティストに対し、中村氏は「作品だけでなく、キース・ヘリングのアートに対する信念や、生涯にわたって描き続けたその姿勢、創作に身を捧げた生き様のすべてに共感しています」と語る。
この地を選んだのは、山梨県出身という郷土愛に加え、八ヶ岳南麓が縄文文化の栄えた土地であることが理由だった。中村氏はキース・ヘリングの作品に見られる象形文字的なモチーフと、縄文土器の原始的表現力に共通するものを感じ取った。その発想を建築家・北川原温が「闇から希望へ」というテーマで美術館建築に昇華させた。空間は闇の展示室から希望の展示室へと導く動線で構成される。希望の展示室では八ヶ岳の夜明けを再現した光に包まれる。
現在約1000点のコレクションを所蔵し、常時100点余りを展示。キース・ヘリングが1986年にニューヨークで開いたグッズショップ「ポップショップ」を思わせるコーナーでは、「アートはみんなのもの」という信念を体感できる。来館者は希望を胸に、世界で唯一のキース・ヘリング専門美術館を後にすることだろう。
山梨県北杜市小淵沢町10249-7
Open 9:00〜17:00(最終入館16:30)
定期休館日なし ※臨時休館日についてはHPでご確認ください
P 47台 EV充電器 なし