LEXUS RX350h/Sonic Quartz
一人の実業家の純粋な想いから始まった物語。30年にわたるキース・ヘリング作品の蒐集、世界で唯一の専門美術館の開館、そして建築家・北川原温氏との運命的な出会い。中村和男氏の創造への情熱が「泊まれるミュージアム」として結実したのが、ここミュージアムホテルキーフォレストである。美術館に泊まるという体験を通じて、現代社会に生きる私たちが見失いがちな何かを思い出し、希望を胸に日常へと帰っていく。それは単なる宿泊を超えた、心の旅なのかもしれない。
PHOTOGRAPHY Atsushi Makabe WORDS Koichi Yamaguchi
中村和男氏の情熱が生んだ
アートとホテルの新しい形
八ヶ岳南麓、標高1000mの場所に佇む一軒の建物は、現代美術のオブジェのようだ。コンクリートの外観に刻まれた幾何学的な意匠の窓から、森の緑と空の青が額縁のように切り取られる光景は、現代日本を代表する建築家・北川原温の感性が結実した傑作である。ここは「ミュージアムホテルキーフォレスト」。わずか6室のスモールラグジュアリーホテルに込められた物語は、一人の実業家の純粋な想いから始まっている。ホテルのオーナーである中村和男氏は、30年にわたってキース・ヘリング作品を蒐集し、2007年に世界で唯一のキース・ヘリング専門美術館を小淵沢に開館した。美術館設計を手がけた建築家・北川原温氏との出会いは、中村氏にとって運命的なものとなる。二人は美術館完成後も深い友人関係を築いていった。そして2015年、美術館に隣接してこのホテルが開業する。「泊まれる美術館」というコンセプトのもと、現代性と伝統が融合した唯一無二の空間が誕生したのである。中村氏が北川原氏に再び設計を託したのは、美術館で培った深い信頼関係があったからこそだった。中村氏の尽きることのない創造意欲に応える形で、美術館から温泉施設、そしてホテルまで、一連の建築群が生み出されていった。
各客室は自然を司る6つのエレメントをテーマに、それぞれ異なる表情をもつ。古来の思想が現代的なインテリアデザインに昇華され、宿泊者を包み込む。滞在する部屋によって全く異なる世界観を体験できるのも、このホテルならではの魅力だ。館内には中村氏のコレクションから厳選されたアート作品が点在し、廊下を歩くだけでも小さな美術鑑賞の時間が生まれる。一階の「中村ウイスキーサルーン」では、中村氏が世界各地から自ら集めたヴィンテージウイスキーが並ぶ。屋上スカイテラスからは八ヶ岳、南アルプス、富士山を一望し、夜には満天の星が頭上に広がる。隣接する露天温泉「スパ・キーフォレスト」では、浅緑色の源泉に身を委ねながら、森の生命力を五感で感じることができる。
中村キース・ヘリング美術館隣に位置する、客室わずか2部屋のプライベート別館。オーナーの別邸を改装した建物で、ホテルスタッフは常駐せず、より静寂に包まれた大人の隠れ家として利用できる。大きな共有リビングを備える究極のプライベート空間。美術館への無料入館特典付き。
山梨県北杜市小淵沢町10248-16
☎ 0551-36-8755
P 約10台 EV充電器 なし
美術館から徒歩3分の距離にある別館「ヴィラ・キーフォレスト」は、より静寂に包まれた大人の隠れ家である。客室わずか2部屋、オーナーの別邸として使われていた建物を改装したプライベート感あふれる空間は、大きな共有リビングを備え、まさに「隠れ家」と呼ぶにふさわしい贅沢がある。「美術館は見せるためだけの場所ではなく、社会への問題提起や、アーティストが伝えたかったメッセージを現代に発信していく場所でありたいと考えています」と語る中村氏。その想いは、美術館を超えた「泊まれる美術館」という新たな形で結実した。美術館に泊まるという体験を通じて、現代社会に生きる私たちが見失いがちな何かを思い出し、希望を胸に日常へと帰っていく。それは中村氏と北川原氏という二人の創造者が築いた理想の空間なのである。
150余年の歴史を誇る同宿だが、現存する建物の殆どが昭和初期に行われた大規模改装の際に作られたもの。金山の発掘で財を成した創業家2代目の足立顕治氏が、昭和の大恐慌で凋落した地元経済の再生と雇用創出を目的に、私財を投じて全面改修を敢行。約4年をかけて完成した宿は、伊豆中の宮大工が腕を競った意匠や現代では再現不可能と言われる設えが、当時の面影をいまに伝える。
ヴィラ・キーフォレスト
中村キース・ヘリング美術館隣に位置する、客室わずか2部屋のプライベート別館。オーナーの別邸を改装した建物で、ホテルスタッフは常駐せず、より静寂に包まれた大人の隠れ家として利用できる。大きな共有リビングを備える究極のプライベート空間。美術館への無料入館特典付き。
山梨県北杜市小淵沢町10060-844
☎ 0551-36-8755
P 約10台 EV充電器 なし
✉ keyforest@keith.jp