約20万年前に八ヶ岳の山崩れによって形作られた七里岩台地。周囲を壮大な山々に囲まれたその場所に、一棟貸の絶景宿 ヴィラグリファーム七里岩はある。贅沢な時間が流れる上質空間で、憧憬の移住ライフを体感したい。
Photography_Kunihisa Kobayashi Words_Tetsuya Sato
憧れの移住生活を擬似体験できるサウナ付きヴィラ
「VILLA 森と風」のエントランス。
プライベート空間から見渡せるどこよりも美しい富士山
山“緑の農場(グリーンファーム)”を意味する造語から名付けられたヴィラグリファーム七里岩。“山梨で一番美しく見える富士山”も、その魅力のひとつ。手前の山々が干渉しない距離感や、荒々しい山肌を感じさせない位置関係が日本一の名峰をより際立たせる。四方を茅ヶ岳、八ヶ岳、南アルプスに囲まれた風光明媚な場所に、ヴィラがオープンしたのは2021年夏のこと。オーナーの遠藤さんによると、そこに至るまでは様々な紆余曲折があったという。2011年の東日本大震災やアジアでの感染症の流行から、人の集中しない田舎が注目される時代が来ると読み、リスク分散も含めて地元に近いこの場所で自宅用の土地を購入。当初は、家族で暮らしていた東京との二拠点生活を想定していたが、「この景色をもっと多くの人に見てほしい」という想いが募り、ヴィラの開業を決意する。さらに、コロナ禍を経て「今後もっと田舎暮らしに目を向けてくれる人が増えるのなら、自分が移住生活の理想を体現してみるのも面白いのでは?」と、二拠点生活ではない本格的な移住を選択。勤めていた会社を辞め、東京の住まいを売却して家族揃ってこの地に移り住んだ。
オーナー・遠藤貴士さん
建築デザイン会社や大手デベロッパー、リクルートなどをて42 歳で独立。家族と共に移住してヴィラグリファーム七里岩をオープンさせた。オーナー業の傍ら、宿泊客の応対やバーベキューの準備を自ら行うなど、気配りの利いた等身大のサービスが好評。ご自身のポートレートをお願いすると、慌てて白シャツに着替えて撮影したのがこの1 枚。地域振興を含めたアイデアを発案するだけでなく、ご尊父と一緒にDIY で造園を行うなど「頭」と「身体」でヴィラを盛り立てる。
当施設があるこの場所は、50年以上手付かずだった耕作放棄地。それを一から造成し、建物の基本設計を建築家・河口佳介氏が担当。施工は今号でも紹介したイロハクラフトが手掛けた。「アクタス」フルコーデによる調度品や、庭の植栽まで一切妥協しなかったのも「移住生活の理想を見てほしい」という想いから。ゲストは経営者や金融関係といった富裕層が多く、お忍びで著名人が訪れることも。中には、別荘を探しに北杜に向かう途中で宿泊し、初めて韮崎の魅力に触れて候補地を急遽変更する人も少なからずいたという。「季節によって景色が全く変わるので、それを楽しみに訪れるお客さまも多いですね」と、遠藤さんも胸を張る。実際にゲストの多くがリピーターというのもうなずける話だ。
正面に富士山を望む素晴らしい眺望。リクライニングチェアに座ってただ景色を眺めるだけで慌ただしい日常を忘れさせてくれる。
サウナと風景美が織り成す癒しのリトリート体験
ヴィラは一日二組限定で、離れのような宿泊棟は、他者の気配を感じさせないプライベートな空間で大人5名まで宿泊できる「VILLA 森と風」と、大人6名まで泊まれる「VILLA 山と空」の二棟。落ち着きのある部屋は、シンプルだが随所にこだわりが。杉板張りの天井やナラの木を使った床、さらに漆喰の壁など、ぬくもりを感じさせるナチュラルな設えに仕上げた。壁面には、岡本太郎現代芸術賞を受賞した彫刻家・モリソン小林氏の作品を飾るなど、コンテンポラリーな感性が空間にアクセントを添える。晴れた日にはどちらのヴィラからも富士山が望め、早朝に現れる幻想的な雲海は、ここが非日常空間であることを実感させる。
「 VILLA 森と風」の室内。畳敷きのスペースが特徴で、柔らかな日が差し込むまどろみの時間が贅沢。
オプションで楽しめるサウナも評判だ。本場フィンランドから輸入したバレルサウナで、暖めた石に水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」も楽しめる。サウナの外には、8人が同時に浸かれる水風呂とシャワーも完備。雄大な山々が取り囲む絶景での外気浴は、至福のインナートリップへと導いてくれる。また、サウナは時間毎に区切られているので、誰にも邪魔されることなく存分に満喫できるのも嬉しい。
大人がサウナを楽しむなら、子供には農業体験をおすすめしたい。収穫時期は異なるが、全部で100品種以上ある野菜は、すべて農薬や化学肥料を使用しないもの。収穫した野菜はそのままバーベキューで食べることもできるので、子供たちは“地産地消”の優位性を体験を通して学べる。今後は、総敷地面積5万平米超という広大な土地を生かして、貸し農場などの新たなプランも計画しているという。「リアル“あつ森(あつまれどうぶつの森)”みたいだね、とはよく言われます(笑)」(遠藤さん)。“この土地の美しい景色を共有したい”という純粋な想いが実際にかたちとなり、まわりを巻き込みながら地域のコミュニティを形成する。それはもうゲームを超えた立派なまちづくりだ。遠藤さんが考える理想の移住ライフにまだまだ終わりはない。
駐車場からアプローチを通ってVILLA 山と空、VILLA森と風へ。それぞれの建物はしっかりと距離が保たれ、庭にも目線を遮るウッドフェンスが備えられているので、プライバシーへの配慮も十分。
山梨県韮崎市穴山町2509-1
☎ 0551-30-9481
Close 不定休 P 15台
EV充電器 なし(※2台設置予定)
※一般道から敷地へのアプローチと駐車スペースは未舗装路となります