未来に託すバケットリスト

「バケットリスト」とは、生きているうちに自分がやりたいことを書き出したもの。では、自分のためではなく、子供や孫、その先まで継承したいモノやコト、文化はあるのだろうか。そこで、本誌と縁の深い6人の識者に尋ねた。「あなたは何を未来に残したいですか?」

 

 

 

Q:未来に託したい3つのコト、

モノを教えてください。

 

 

 

安東弘樹

フリーアナウンサー

2018 年にTBSテレビを退社し、現在はフリーアナウンサー

として活躍中。芸能界きっての車愛好家としても知られ、

自動車関連の連載コラムを多数執筆するほか、2017年より

『日本カー・オブ・ザ・イヤー』の選考委員にも名を連ねる。

 

 

 

クルマのMT

クルマを自在に操る、という快感を知っているか知らないかで、クルマに対する想いも変わってきます。トヨタのEV用のMTを自分の目で確認して、この快感はEVになっても残せると知ってからは、益々、そう思うようになりました。
自然環境

水や空気といった必要不可欠なモノだけでなく、それによって育まれる自然や風土も遺したいです。実際に時々、クルマで走りに行く「林道」などは自然災害によって頻繁に通行止めになっています。環境を守らなければ。
教育費無償

才覚に恵まれていても経済的な理由で高等教育が受けられない子どもが存在する、というのは国や、ひいては人類全体にとっても損失です。私自身、自己負担で大学にも進学しましたが、正直、大変でした。次の世代には勉学に集中出来る環境を!

 

 

 

 

 

田辺俊彦

クリエイティブ・ディレクター

2022 年にクリエイティブ・ディレクター・コレクティブ

(つづく)を設立。トヨタ自動車グローバルキャンペーンや

資生堂150周年キャンペーンなど、国内外の仕事を手掛ける。

2018年には、『クリエイター・オブ・ザ・イヤー』を受賞。

 

 

 

テクニクスのターンテーブル

DJ 活動を精力的に行っていた2000年代、テクニクスのターンテーブルは体の一部になるくらいずっと触れていた存在でした。デジタル音源はもちろんAI制御でいくらでも音を作れる時代だからこそ、指先の感覚で音を紡ぐ喜びを未来に残したい。
インダストリアル・アートとしてのクルマ

合理性とマーケットニーズによって導き出されるデザインだけではなく、存在そのものの美しさで人を虜にするクルマを残したい。しかも高級車ではなく量産車こそ、そうあってほしい。建築同様、乗り物も都市の景観の一部だと思うのです。
ニホンウナギ

築地の実家のすぐ近くに老舗の鰻屋さんがあり、風に乗って窓から入ってくる蒲焼の煙の匂いは幼少期の鮮明な記憶の一部です。そんなニホンウナギも乱獲や密猟、河川開発により絶滅危惧種に。食べるなら、守るための意識ももっていたい。

 

 

 

 

 

中村孝則

コラムニスト

ファッションからカルチャー、グルメ、旅行など“ラグジュアリー

・ライフ”をテーマに、雑誌や新聞への寄稿、講演活動などで活躍。

「世界のベストレストラン50」の日本評議委員長をはじめ、大日本

茶道学会茶道教授を務めるなど、多彩な顔を持つ。剣道教士七段。

 

 

 

お六櫛(おろくぐし)

江戸時代から約300年続く長野県の伝統工芸品の櫛。お六櫛には、樹齢200年から300年のミネバリという木が材料として用いられ、さらに10年以上乾燥させてから、職人の手によって歯が挽かれている。その歯数は10㎝で100本のものもあるほど緻密。この櫛の文化を後世につないてほしい。
村上木彫ぼり堆朱(なかむらきぼりついしゅ)

「新潟県無形文化財」にも指定されている漆器。木地に花や鳥などの模様を彫刻し、天然の漆を塗り重ね、上塗り後に艶消しという工程を行い、表現を豊かにするために毛彫りを施してある。長く使うほどに赤みが鮮やかになり、手触りもよくなることから、職人の後継者はもちろん、世代を繋いで使い続けてほしい。
天 た つ の「 汐 う に 」

日本三大珍味と名高い、越前「汐うに」。福井県の「天たつ」は、そんな「汐うに」を作る老舗で、1804年に創業し現在で11代目。一個の新鮮なウニからわずか1グラムしか作れない逸品は、今でも、江戸時代から続く海人漁で、天然のウニから採取されている。この美味しさは、後世にぜひとも残したい。

 

 

 

 

 

廣瀬雄一

江戸小紋染職人

ウインドサーフィンの五輪強化選手として活躍。大学卒業後に

「廣瀬廣瀬染工場」4代目として家業を継ぎ、日本伝統工芸展に

4度入選を果たす。ジャガー・ランドローバー日比谷での

コラボをはじめ、江戸小紋の魅力を国内外に伝えている。

 

 

 

江戸小紋のデザイン

小紋の紋様は、世界に類を見ない日本の中で生まれたものが多く、江戸時代の鎖国政策によって閉ざされた時代だからこそ豊かでバラエティに富んだデザインが生まれました。このデザインはしっかり受け継いでほしいです。
江戸小紋の技術

江戸時代から400年受け継がれてきた「江戸小紋」の技を、子や孫に伝えていきたい。無形文化財とは人から人へ繋いでいくもので、技術は早い時期に教え込まないとなかなか習得することは難しい。技術は本当に大事ですから。
 

 

 

 

 

 

中村孝也

ファイナシャル スペシャリスト

日興證券(現SMBC日興証券)を経て株式会社フィスコ 代表取締役。

新規上場ブーム時には1,000社を超える企業の調査・分析を手がけ、

現在はカイカエクスチェンジホールディングスの取締役なども

歴任。フィスココインのバリューアップ責任者を務める。

 

 

 

投資教育

日本は国全体として、所得が高くなり製造業の国際的な価格競争力が落ちる一方、蓄えた資産を投資して稼ぐ傾向です。個人においても同様で、最低限の運用の知識は身に付けておく必要があり、投資手法の発信など投資教育も盛んになっています。
1 %投資という手法

ハイリスク・ハイリターンの銘柄を1% 入れておく「1%投資」をおすすめします。中でも暗号資産分野は可能性があり、“伝説の株式投資家”として知られるビル・ミラー氏も純資産の1%をビットコインで所有していたそうです。
暗号資産

ミラー氏のように、失ってもよい程度の額を暗号資産市場に投資して、大幅なリターンを得る可能性をつくることが「1%投資」の真意です。暗号資産の投資を考える上で、この「1%投資法」という観点は、有効になり得るでしょう。

 

 

 

 

 

田中泰

音楽ジャーナリスト/プロデューサー

2008年に「スプートニク」を設立。「家庭画報web(名曲物語365)」

「アプリ版ぴあ(クラシック新発見)」等の連載や、J-WAVE「モーニ

ングクラシック」のナビゲーター、JAL 機内クラシックチャンネル

の構成を通じて、一般層へのクラシック音楽の普及に努める。

 

 

 

ハンドル

いずれ車が全て自動運転となり、ハンドルが過去の遺物になろうとハンドルを握ることがどれだけ素敵なことなのかを覚えていてほしい。免許をとって初めてドライブに出かけた時の喜びや、ハンドル越しに流れる景色の美しさを思い出してほしい。そう、ハンドルとは自由への扉を開く象徴なのだから。
 
紙の書籍

美しい装丁や、手にした時の重量感、そして本を開いた時の独特の紙とインクの匂いの素晴らしさ。これはお菓子のパッケージにも通じるだろう。流石にお菓子ばかりは電子化不能なものだけに、パッケージは今も健在。そのパッケージを紐解いてお菓子をいただく喜びは、まさに書籍を紐解くという言葉にも相通ずる。

 

 

 

 

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