PORSCHE Panamera/キャララホワイト メタリック
レースや競技を引退した保護馬が、豊かなセカンドライフを築くことを目的とした牧場が栃木県大田原市にある。馬たちと触れ合う特別なひと時は、動物と人間の共生可能な未来への示唆を与える。
Photography_Kunihisa Kobayashi Words_Tetsuya Sato
保護馬が余生を過ごす牧場で
癒しと生命の尊さに触れる
撮影日はあいにくの曇天だったが、「ホーストレッキングコース」では、馬上から遠くの山々や広大な扇状地を見渡せる。子供が騎乗し、スタッフが手綱を引いて誘導する「引き馬コース」も人気。
馬上から大パノラマを望む優雅なホースライディング
大パノラマを望むファームは、車を停めるだけでも「絵」になる。
年間約３、０００頭。これは競走馬や競技馬が引退した後、その行方が不確かな数である。乗馬クラブや動物園などで新たなキャリアを歩むのは少数でその多くは、殺処分されてしまう。そうした状況を少しでも変えようと、２０２０年に設立されたのが「NASU FARM VILLAGE」だ。元々あった乗馬クラブの運営が行き詰まり、このままでは馬は殺処分、従業員も解雇されてしまうという窮地に手を差し伸べたのが、俳優・実業家の紗栄子さんである。保護犬活動にも尽力するなど、動物愛護精神に富んだ彼女は、クラウドファンディングを活用して土地ごと買い取り、スタッフの雇用と馬たちの命を守ったのだ。
美しい毛並みと恵まれた体躯、そして優雅な佇まいは神々しさを感じるほど。
オープンから4年。今では、保護馬は16頭を数え、「餌やり体験」（1カップ ５００円）や散歩とブラシでのケアを行う「セラピー体験」（45分 ３、３００円）、さらに、牧場から那須野ヶ原を眺望しながら、乗馬を楽しむ「ホーストレッキングコース」（1㎞コース ８、８００円）などを展開する。カフェやレストランの利用も含めて、週末には訪れる人々が引きも切らない。それでも、暑さに弱い馬たちのためにトレッキングを見送ったり、稼働し過ぎないよう調整したりと、馬の体調とコンディションが最優先。「保護馬の豊かなセカンドライフを築く」という目的が揺らぐことはない。個々の性格や得手不得手を尊重し、自信を取り戻した馬たちと、異世界を思わせる絶景の中で触れ合う機会は、癒し効果だけでなく、アニマルライツについて知識を深める一助となるだろう。
新型ポルシェ・パナメーラの奥に見える白い建物が厩舎。洒落者である前オーナーのこだわりが窺える造り。手前の建物にはレストランとショップを併設。
ファームの広報を務める桝田さんさんは「殺処分されているという事実を知る一つのきっかけになれば嬉しいですが、まずはお馬さんの魅力を沢山の人に気付いてほしいですね」と語る。
「ハイソな乗馬のイメージを無くして敷居を低くしたい」という紗栄子さんの意向からイベント開催時を除き入場料は無料。レストランでランチを堪能するもよし、カフェで一息つくもよし。売上の一部が保護馬支援に寄付されるマーチャンダイズの買い物も含めて、馬と触れ合う以外にも楽しみ方は色々。英国式建築に倣った重厚な厩舎やレンガ造りの建物、手入れの行き届いた緑地から成るイングリッシュガーデン調の趣は、ウエディングフォト需要を後押しする。
ただ、馬の飼育費用は高額で、怪我の治療やリハビリ代、さらに獣医やトレーナーといった専門スタッフの確保など、運営していくのは並大抵ではない。それでも行き場を失った保護馬のために初志を貫く。「将来的にはより多くの保護馬を引き取れるようしっかりと経済活動を確立したいですね」（桝田さん）。まだまだ手綱は緩みそうにない。
NASU FARM VILLAGE
各種シーズナルイベントの他に、不定期でワークショップやフォトセッションなども開催。オリジナルアイテムの情報も含めてインスタグラムでチェックを。
ファーム内に併設されたレストランでは、地元産の新鮮な野菜を使った特製ランチが人気。晴れた日の土日祝日だけオープンする「Weekend Café」も含めて、すべてのメニューがテイクアウト可能なので、場内でピクニックも楽しめる。ショップでは、ファームで収穫した野菜を使ったドレッシングや自家栽培のコーヒーを使用した黒糖ラテベースなどに加え、T シャツや環境に配慮した素材を使ったオリジナルグッズやセレクトアイテムを取り扱う。
栃木県大田原市狭原1298-1
☎ 0287-54-0009
☎ 080-4857-0974（乗馬予約専用）
P 20台 EV充電器 なし
