単なる自動車メーカーではなく、グローバルなラグジュアリーブランドとしてそのプレゼンスが高まる「ポルシェ」の日本市場の舵取りを務めるフィリップ・フォン・ヴィッツェンドルフ CEO。多忙なスケジュールの合間を縫って独占インタビューを敢行した。
Photography_Eric Micotto Text_Shogo Hagiwara
ドイツを皮切りに世界各国で展開
去る2022年7月1日にポルシェジャパン株式会社の代表取締役社長に就任したフィリップ・フォン・ヴィッツェンドルフ氏。ポルシェリテールハンブルクのCEOとして輝かしい実績を築いた人物であり。ラグジュアリーなグローバルブランドとしてのポルシェのプレゼンスが拡張・拡大している日本マーケットの舵取りを担うことになった。
就任からまだ日の浅い現在は、日本各地のポルシェディーラーを巡り、将来へ向けた強固な関係づくりに忙しくしているというがその多忙なスケジュールの合間を縫って「TOUCH DRIVE」の独占インタビューに応えていただく機会を得た。そしてインタビューのメインとなったトピックは、ポルシェの新しいリテールフォーマットとして今、世界各国で注目されている「デスティネーション・ポルシェ」だ。
TOUCH(以下T):常時変化していくカスタマーの趣味嗜好をリアルタイムで的確に捉え、また同じく進化していく自動車リテールの未来の形にも順応していくコンセプトとして「デスティネーション・ポルシェ」は、自動車業界の内外を問わず注目されています。個々人に寄り添うカスタマイズされたサービス、デジタルテクノロジーの導入、そしてブランドエクスペリエンスに特に重きを置いていますね。後者でいえば、日本では昨年10月に「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」もオープンしています。
フィリップ・フォン・ヴィッツェンドルフ氏(以下PvW):「デスティネーション・ポルシェ」とは、2019年初頭に発表された新しいリテールのフォーマットで、2020年にドイツのドルトムントでオープンしたのが、この新しいリテールのフォーマットのもと建てられた世界初のディーラーです。
ではこの「デスティネーション・ポルシェ」とはいったい何なのか?ひと言でいえば、将来に向けて常に進化し続ける消費トレンドに瞬時に対応できるシステムを備えたフォーマットです。世界各国のディーラーだけでなく、ポルシェファンにも同様に歓迎されています。デジタル技術も含めた多機能でフレキシブルなシステムが、数多くのオプションや可能性をお客様に提供する自動車リテールの新しい形なのです。五感を通してポルシェというブランドを体感していただけることでしょう。
そして、このコンセプトの中でもっとも重要なのが顧客の存在なのです。もはや自動車ブランドの役割は、単にクルマを販売するという範疇を超えたものになっています。観客がもつそれぞれのライフスタイルやニーズを的確に捉えたディレクションが不可欠で、このトレンドは今後もさらに進化していくと考えています。
T:まさに(インタビューが行われた)ここポルシェスタジオ銀座もそのコンセプトを体現していますね。
PvW:文字通りディーラーに足を踏み入れた瞬間、あなたとポルシェの旅が始まります。そこを起点に、あなたご自身の趣味嗜好、ニーズに合わせた形で、自由自在にポルシェというブランドを体感していただくことができるのです。
コンセプトはワールドワイドに共通でありながら、個々のマーケットのニーズに応じてカスタマイズできる―。これも「デスティネーション・ポルシェ」の特徴の一つですが、日本では他の国にないレベルの高さで実現されていると思います。例えばタイル、石材、木材などすべてがトップクオリティであることにこだわり、ポルシェがもっとも大事にしている考えを、日本ならではのユニークなアプローチで形にしています。
そしてそれがまさに日本のカスタマーがポルシェに期待していることであると思います。また、モーターレーシングなどハイパフォーマンスブランドとしての系譜を受け継ぐかのように、最新のレースシミュレーターも用意されています。他ではなかなかできない経験です。
T:銀座という立地に関しては?
PvW:銀座というロケーションについてはいうまでもありません。アクセスが良く、顧客やポルシェファンが気軽に訪れることができ、さらに多くの人の目に留まるロケーション」と条件をすべて満たしています。またラグジュアリーブランドとして、既存オーナー、ファンならず、潜在的顧客が訪れるエリアであることもビジネスの観点からは同じ重要です。
ここは、ポルシェオーナーであるかどうかは関係なく、どなたにとってもウェルカムな場所であることを忘れないでいただきたい。ポロシャツやTシャツなどアパレルのコレクションもありますし、実車を間近に見て、感じていただくこともできます。コーヒーの味は最高ですし、もしお腹が空いた時には隣接するレストランでランチやディナーを召し上がっていただくこともできます。
そしてポルシェのスペースだと知らないで足を踏み入れた人も、この空間を出る時には頭の片隅にポルシェの名前が刻まれていることでしょう。まさにこのプロセスを通じて、ファンを増やし、またこのプロセスを通じて、ファンを増やし、またそのファンの方々の夢をさらに高めていくのが私たちの仕事なのです。
“ コーヒーの味も最高です”
T:まさにブランドエクスペリエンスですね。一方で、将来の自動車リテールはオンラインが主流になるという見解もありますが。
PvW:確か、オンラインですべて確認・購入したら、あとは実車を届けてくれれば良い、というカスタマーがいることも確かです。夢を体感していただくという意味です。しかしブランドのソウル(=魂)、夢を体感していただくという意味では、インターネットで購入できるという利便性以上の体験を提供する必要があります。
だからこそポルシェはどんなカスタマーでも満足いただけるタッチポイントでリラックスしながらオンラインで注文したいというお客さまであれば、当然可能です。
ですが、シートのレザーの手触りを確認したい、ボディカラーを太陽の下で確認したいというのであれば、もちろんそのリクエストも叶えていただけます。さらには高価なクルマですから、まずは試乗したいとい方もたくさんいらっしゃるでしょう。私たちポルシェはそのすべてに対応しているのです。
Philipp von Witzendoff
ポルシェジャパン代表取締役社長。ポルシェリテールハンブルグのCEOを経て現職。就任以前の来日経験は「1度のみ」ということで、住まいのある東京から北海道までクルマでキャラバンの旅に出発し、北の地で生涯の修身でもあるスキーを満喫するのが夢だと語る。
PORSCHE STUDIO GINZA
ポルシェ体験の新しいカタチ。ブランドエクスペリエンスを体現する都市型コンセプトストア「ポルシェスタジオ銀座」がオープン。
ポルシェスタジオ銀座
カウンターテーブルやラウンジチェアが配され、さながらライフスタイルブティックのよう。しかしそこはポルシェ。ポルシェに精通するポルシェプロが常駐するとともに、最新のドライブシミュレーターでバーチャル比較試乗体験ができるのも特徴だ。
東京都港区東新橋 1-5-2 汐留シティセンター
☎ 03-6215-9111 Open 10:00~18:00